#退社 #その後 #母と喧嘩 退社して母と喧嘩した、その後
日記

退社して母と喧嘩した、その後

おかやん

言い争いから三日後の話し合い

「ちょっと話を聞いて欲しいんやけど」

風呂からあがって歯を磨いてた時、オカンがそう言ってウチと向き合った。

重々しい雰囲気に、ウチは内心

「なんか嫌やなぁ。でもいつまでも逃げてるわけにもいかんしな」

と、思っていた。

ここ最近、家にいることそのものに罪悪感を抱き、昼も食べないであちこち歩いていた。

おかげでめっちゃ痩せた。(体調に支障を来たさない範囲なので心配ご無用!)

一呼吸おいて、母が切り出す。

「昔な、おじいちゃん(母の父親)が、ある日突然おばあちゃんに『今日仕事辞めてきた』って言うたことがあってな」

そう言った母の表情には、何の感情も見えなかった。

「その時のおばあちゃんの表情……いまだに忘れられへんわ。不安そうで、どうしていいか分からんようなカオ……昔、アンタの父親が『今の仕事辞める』って言うた時、アタシも同じカオしたと思う。で、その時、この男を捨てようと決めた」

娘的には、その判断は正解やと思っている。

金銭の問題は夫婦間では大きい。

家族を養えない男など、さっさと捨てるべきやと今の自分は思っているので、離婚して良かったなぁとウチは思っているから。

とはいえ、ウチは両親が離婚したとき家にいなかったから、どういう経緯で離婚したかまでは知らないんやけど。(聞けば父親が家を出る『完全な離婚』まで、かなり時間がかかったらしい……)

「で、そんなことがあったあと、しばらくして、おかやん弟宛に国民保険の支払いの通知が来た。おかしいなって思って聞いたら、『仕事辞めた』って言うねんな。アタシはそれをあとから知った。で、今度はアンタや」

なんでなんやろうねぇ。これもオカンに与えられた宿命なんか。

「アンタはそんなことせんって信じとったのに……」

心底残念そうに母は言う。

二度と経験したくないことを、身近な人が何度も繰り返す。

そういう母の人生も、なんだか不思議なもんだ。

しかし、ウチから言わせてもらえば、母のソレは「勝手な期待」というもんだ。

弟の職場は毎日毎日残業ばかりで寝る時間もほとんどなかったらしいし、

ウチも「あの会社は無理」って、初日から言うてたわけなんやから。

しかもウチの場合、事後報告ではあるけれども、「今日辞めてきた」ではない。

「今週であの職場を辞めるように言うて来た」

という報告やった。

母の落ち込みようは理解できるものの、娘の人生にそんな過度な期待を寄せてはいけないとウチ的には思うのだけれど、母にもそういう背景があるもんだから、仕方ないとは思っている。




オカンのトラウマ

実父、夫、息子、娘、と「今日仕事辞めてきた」と聞かされてきたオカンの気持ちってどんな感じなんやろうな。

ウチは夫が「体調が悪いから仕事出来ない」もんだから、自分が頑張るしかなかったわけやねんけど。

まぁウチの家系は、女が家を支える宿命にあるのは間違いない。

その中でも、ウチはかなり稀有けうな立ち位置やなぁと思っているけれども。

ウチは歯磨きをしながら、オカンの言葉を待つ。

「しかもアンタの場合……あの父親とまったく同じことを言うんやもん。もうな、アタシのトラウマやねん。せやから、こうやって話せるまでにかなり時間がかかったわ」

遠い目をして、沈んだ声で、オカンは言う。

「でもな、アンタの人生やし、アンタが決めたことなら、もうええわ。アンタは頭もいいし、あの父親とは違うから、もう、アンタの好きにしい。アンタの人生や」

あ。うん。ウチの人生っすよ。

オカン、気付くのが遅い。

前の時かて、ウチなんべんも言うたのに。

『ウチの人生やからウチの好きにしたい』って。

……母親って、難しいんやろうね。

自分がしてきたような苦労をさせたくないがばかりに、道を押し付けてしまいがちになるみたい。

あと、自分の価値観が正しいと、やっぱりどこかでは信じているんやろうと思う。

「アタシの面倒とか見なくていいから。この家には弟もおるし。一人で暮らしたかったらそうしたらええし、父親と暮らしてもいい」

「あ。その辺は大丈夫。すでに家はもう探してる。土地の下見は終わったから、あとは内見だけー」

「あー。アンタならそうしてると思ってたわ」

オカンの勘は、相変わらず侮れない。

第六感が冴え過ぎやろって、怖いんやけど(笑)

「でもアンタもお金もないやろうし、そんなすぐに引っ越さんでもええやろ?」

「……せやな」

でも出来るだけ早く引っ越したい。

同じ家にいると、もうしんどいとすら思う。

ここは自分の居場所やないって、「自分の家」ではないって、そういう気持ちが今は強すぎるから。

「アンタの人生やし、好きなだけ失敗したらええわ」

「失敗ねぇ……まぁウチも、改めて派遣について調べれば調べるほど、怖いと思ったよ。オカンが危惧してたことの真意は分かってきたと思うで」

ウチはやると決めたら全力でそれについて情報を集めるタイプやから。

なにかあったときの派遣の弱さ・怖さは知れば知るほどに恐ろしく思った。

でも、それも承知の上で選んだ道なら、どうなったって構わない。

オカン的には出来るだけ失敗して欲しくないんやろうって思っていても、ウチは四敗しても後悔してもいいからその道を進みたいんよね。

誰かに決められたモノって、そもそもウチらしくないし!

オカンが独り言のようにぽつりと言う。

「アンタはもうちょい賢いと思ってたわ」

オカンよ、どっちやねん(笑)

あと言うておくが、ウチはどちらかと言えば、考えなしのアホな部類の人間やぞ。

そうでなきゃ「駆け落ち」なんて無謀なこと、普通はせんやろ。

残念やが、そこは認識を改めた方がええぞ。オカン。




依存と自立

ウチがもし、大阪に帰ってくるとき、最初から一人暮らしを選択していれば、こんなぶつかり合いも生まれなかったと思う。

そしたら母親と散財したお金も、もしかしたらもうちょっと手元に残ってた「かも」しれん。

でも、今回ここで母親と揉めて良かったと思っている。

話し合いの時、オカンは言うた。

「一緒に暮らしてたら、どうしても相手に依存してしまう」

まさにそうやと思うんよね。

ウチだけやなく、母親の方も子離れする時が来たというか。

子どもの人生はその子のものだって、こんなことがあるまで、母親的には認識できていなかったんじゃないかと思うんよ。

お互いに自立した人間として認めるには、こういう対立って重要なイベントな気がしてなぁ。

ウチはとんでもない状況下で家を飛び出した鉄砲娘やから、普通ならどこかで迎えるであろう「巣立つ」イベントをすっ飛ばしてきたように思った。

オカンは言うた。

「アンタが帰って来てから楽しかったわ」

嬉しい一言やね。

ウチが「そこにいて良かった」と言ってもらえた……と思えた。

オカンと揉めてから、この家での自分の存在意義ってなんやろうって思ってた。

17年もおらんかったんや。

自分が火種になるってんなら、ウチってもうおるだけで邪悪な存在やん?

オカンと言い争ってからのこの数日、なんのために自分が実家にいるのかが、ウチは分からんくなった。

でそんな中、オカンから「楽しかった」と言ってもらってホッとした。

「そこ」に費やした時間がお互いに有意義であれば、やっぱり実家に帰ってきて良かったと思えた。

結果から見て、母とぶつかり合って良かった、とも。

とはいえ、早くこの家を出たいとは思っている。

やはりここは、もう自分の家ではないのだ。

自立したい。

本当の意味で。

お互いのため。

自分のために。

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  1. 福子

    自立って難しいなぁ。
    放任とは違うし。信頼するってことかなぁ?
    お互いがお互いを信頼できて初めて、『自立した』って言えるのかもしれない。
    危なっかしくて見てられないって時は、まだ自立できてないのかも?
    この私だって自立できてるかどうか、怪しいから。

    • おかやん

      福子さん。思います。自立って難しい。
      ただ母は「アンタが広島にいるときは、こんな心配してなかった」と言っていたので、やはり一緒に暮らしているからこそ甘えてしまう部分ってあるのだと思います。
      危なっかしくてみていられないか……分かる(笑)
      「これ」が出来ているから「自立している」と言えるのか、私も分からないっす。
      でも、父は「自立」の一つの目安として「呼び方」を言ってますね。
      「お父さん」「お母さん」から「オトン」「オカン」になったのは、ウチの精神性が変わったからだと言ってました(笑)

  2. たか♨

    昨日梅田でお会いして、また少しおかやんさんのことが知れました。
    派遣は正社員から比べれば職場への依存度が低いので、弱いというより、自由だと思います。
    お母さんとのこと、楽しかったと言ってもらった日々は宝物だと思います。
    賃貸借契約の際は一応大家さんしてますから、何かあればご相談ください。

    • おかやん

      たかさん。昨日はありがとうございました!
      自由、そう、自由なんですよね。
      素敵な言葉です。自由とは。
      ハイ。私も母に「楽しかった」と言ってもらえたのは本当に嬉しかったです。
      ぼったくられないように色々調べてはおりますが、もしかしたら相談するかもしれません。
      その時はどうぞ、よろしくお願いします!

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アラフォー主婦のノンフィクション雑記ブログ
21歳で駆け落ちした経歴を持つ、現在39歳の未亡人です。 このブログが多くの人に読まれ、亡くなった夫のことを私以外の誰かにも知って欲しい。
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